「食べ物をよく噛んで食事をしたほうがよい」
いまさら言われるまでもないことです。では、よく噛むというのは、何回くらい噛めばいいのでしょうか。
これについては、一概に「何回噛めばよい」とはいえませんが、少なくとも20回以上は噛んだ方がいいでしょう。食べ物を細かくくだき、表面積を大きくして、唾液とまぜあわせることで、その素材の本来のおいしさがあらわれます。歯ごたえのあるものをよく噛んで、口の中を刺激し、骨と筋肉の発達を促せば、顔の表情が豊かになります。唾液もたくさん分泌されるので、消化もよくなるし、唾液腺ホルモンのパロチンという物質が分泌されることによって、若返りの効果もあり、顔の表情も明るくなります。
では、具体的に何を食べればいいのでしょうか。最近の食事は、消化によいことばかりを考えた加工食品が多くなっています。カレーやハンバーグ、シチューなどのレトルト食品は、どれもみんな食材を細かく潰したり、柔らかく煮込んであります。
そういうものはたしかに食べやすいし、楽に消化・吸収できます。しかし、そんな食生活を続けていると、歯や顎、そして胃や腸などの消化器官までが甘やかされてしまい、働きが鈍くなってしまいます。
食べ物は素材に近い姿のほうが堅く、よく噛まないと飲み込めません。加工食品ばかりを食べず、生野菜などをとるように心掛けてください。それから、やはりスルメ。堅い食べ物は、口の中全体でよく噛んで、柔らかくなってから飲み込めば、消化不良を起こしません。口の中をクリーニングする働きのある、リンゴを食べるのもよいでしょう。ガムを噛むのも、口の中を刺激するのでさまざまな効果が得られます。
噛む刺激は、顎の発達だけでなく、認知症の予防や治療にも効き目があります。
顎は脳に近いところにあるので、顎を動かすことで脳も刺激されるわけです。顎、歯、内臓をきたえるだけでなく、将来年をとったときのためにも、堅いものを食べる習慣をいまのうちから身につけておくことです。
きれいな歯のつくり方 田北敏行著 ごま書房刊