歯とからだの話
2018/10/24

生き生きと脳を活性化

口の健康がそこなわれると、食欲不振や精神不安を招き体調不良になります。
「目は心の窓、口は健康の窓」と言われるゆえんです。
また、口への刺激は脳の働きと綿密な関係にあり、認知症予防の効果もあります。

口を使った時の脳への影響

上図左:皮膚感覚を司どる神経の、数の多い・少ないを示したもの
上図右:体の部分の動きと大脳の働きを示したもの

脳への影響力は手、そして頭(特に口)、続いて足の順です。
昔、お年寄りが手にクルミを二個ずつ持ち動かしていたのは、手を使うことが脳を刺激し、頭を生き生きとさせることを知っていたからだと思います。

食べることで脳の3分の2が働く

顔全体の筋肉が動き、脳への血行がよくなる

口を使うことには、食べる、話す、歌う、笑う、ブラッシングするなどがありますが、食べることで脳の三分の二が働くといわれています。
食べるという行為は、目で見て、匂いを嗅ぎ、唇で取り込み、歯で噛み、唾液が分泌され、舌で味わい、噛む音まで楽しみます。
これらの行為で顔全体の筋肉が動き、脳への血行がよくなるのです。

噛む刺激で心も生き生き!

顎を動かす筋肉は胸までつながっており、飲み込むときには足の裏まで力が入ります。
噛む刺激で胃や全身の細胞が目覚め、心も生き生きしていきます。
毎朝ご飯を食べ、歯を磨くことは、単に栄養補給というだけでなく、頭を目覚めさせ、意欲的な活動を始めるために重要なことなのです。

お口を健康に保ち、おいしく食べること

介護の現場において、飲み込む力が衰えた方に食べさせることは、特殊な技術や訓練が必要です。
どうしても必要な場合もありますが、鼻からチューブを通し栄養ドリンクなどを流し込む方法が安易に行われている場合が見受けられます。しかしこれでは、大脳への刺激が少なくなります。
要介護者が口から食べられるようになると、顔が生き生きし、目も輝いてきます。
噛んで食事をする大切さがよくわかります。
介護での口腔ケアは、ただ清潔にするという目的だけでなく、脳を刺激させるという役目も果たしています。食事の前に行う口腔ケアは、唾液分泌や胃液分泌を促し、吸収力をアップさせているのです。
口を健康に保ち、おいしく食べる。これが一番の認知症予防といえそうです。

引用元:
歯で泣く人 笑う人 本田里恵著 医歯薬出版(株)刊