少しまぎらわしいのですが、歯周炎のほかに「歯肉炎」「歯周病」という言葉があります。
歯肉炎というのは「歯周炎」、つまり”歯槽膿漏のはじまりの状態”をいい、歯周病はそれら全部をひっくるめて、”歯を支える組織の病気全体”を指します。
ですので、「歯周炎のはじまりは歯肉炎」で、それを放置すると「歯周炎」、つまり「歯槽膿漏へ進む」ということになります。
むし歯の歴史は古く、日本でも平安時代の中期には「動揺歯」に関する文献が残っています。
この動揺歯が、今でいうところの「歯周炎(歯槽膿漏)」に当たります。
歯肉炎から歯周炎(歯槽膿漏)になるまで
最初はこの歯肉炎からはじまります。
歯と歯肉との間には小さなすき間がありますが、そのすき間に細菌が侵入して、歯肉が炎症を起こすと歯肉炎となります。
歯肉炎は歯全体に一斉に始まるわけではなく、たいていは歯と歯の間などの、歯ブラシが届きにくく汚れがつきやすい場所から始まり、徐々に広がっていきます。
歯肉炎のうちに受診すれば治療も簡単に済みますが、自覚症状が無いうえに、素人目には何も変化が見えないので、この段階で歯医者さんにかかる人はごくわずかです。
むしろ、むし歯などで治療を受けに来た時に発見されるケースが多くあります。
そして、歯肉炎を放置するとしだいに歯茎の内部を侵して歯周炎となり、ついには歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまいます。
ここまで進むとりっぱな歯槽膿漏で、歯槽からは膿が漏出し、いつも口臭が絶えなくなります。
そして支えを失った歯はぐらぐらと揺れ動き、ついには抜け落ちてしまいます。
ちなみに歯槽膿漏というのは、読んで字のごとく”歯槽から膿が漏れる病気”ですが、それはあくまで症状であり、病気そのものの本質を表してはいません。
そこで、最近では「歯周炎」とよばれるようになりました。
少しでも気になることがあれば歯科へ受診
このように「歯周炎」は歯の根のまわりを支える骨が溶け、歯が抜け落ちてしまう怖い病気です。
しかし、かなり悪化するまで痛みなどの自覚症状がないため、歯を残せる段階で治療を受けることが難しいという、やっかいな病気でもあります。
歯周炎を予防、あるいは早めに治療するためにも、定期的に歯医者さんで診てもらいましょう。
歯がわかる本 鴨井久一監修 みずうみ書房刊