お口の中の話
2018/10/30

むし歯について

むし歯は、歯の表面が酸によって溶かされることによって始まると言われています。
実際、歯の表面では、食事のたびにカルシウムなどが溶け出しています(脱灰)。
これは、食事をすると口の中が酸性になるためです。
しかし健康な唾液が十分にあれば、唾液中のカルシウムが自動的に溶けた歯の表面を修復してくれます(再石灰化)。
そしてそのたびに、歯の表面のエナメル質は熟成し硬くなっていくのです。
さらに唾液は、口の中にいる細菌がつくる酸を中和したり、毒素を分解したり汚れを洗い流してくれる効果があるのでとても大切です。

むし歯にかかりやすい時期

ところが、子どもの歯は十分に熟成していません。
若葉のように柔らかく抵抗力が弱いので、むし歯になりやすいのです。
子どものむし歯の多くは、噛む面や歯と歯が接している場所から起こります。
大人になると歯も熟成して硬くなり、比較的むし歯になりにくくなります。
しかし、高齢になるにつれて歯ぐきがやせ、硬いエナメル質で覆われていない根っこ(歯根)の部分が露出してきます。
同時に、歯と歯の間のすき間が広くなり、汚れがたまりやすくなります。
さらに、年を取ると唾液の量が減り口腔内の防御能力が低下するので、歯ぐきに近い、弱い部分がむし歯になりやすいのです。

 

むし歯を繰り返すと歯を抜くことに

小さなむし歯は患部を削って樹脂や金属を詰め、痛みを止めて機能的・審美的な修復をします。
ところが多くの場合、治した部分の周囲がまたむし歯になってきます(二次う蝕)。
そして大きなむし歯になってしまうと、歯の神経(歯髄)を取ってかぶせるような治療になります。
その後、またむし歯になるとかぶせが取れたり歯ぐきが腫れたりします。
そうなると歯を抜くしかないことがほとんどです。どうしてこんなことが起こるのでしょうか。

 

歯の清掃と規則的な生活でむし歯を防ぐ

それは、むし歯になる原因を確実に取り除いていないためです。
夜の歯磨きでは歯ブラシだけでなく歯間ブラシなどを使い、歯と歯の間の清掃を心がけましょう。
体の抵抗力からむし歯予防を考えると、唾液の性能を低下させない、分泌量を減らさないことが求められます。
以下のことに注意しましょう。

(1)唾液の性能を落としたり量を減らしたりする不規則な生活や過労、過度のストレスに気を付けましょう。
(2)ぽかんとあいた口や口呼吸は、唾液の水分が蒸発し防御力が低下します。
(3)唇の閉じる力が弱いと、前歯の外側に汚れがたまりやすくなります。
(4)うつ伏せ寝・横向き寝やほおづえなどでは、歯と粘膜を圧迫しつづけます。口腔内における唾液の循環が悪くなるので、寝相やほおづえには注意が必要です。
(5)歯のくいしばりも、唾液の流れが悪くなるため危険です。

歯の表面が乾くと、唾液による再石灰化が起こりません。
前歯の先の方が白く濁っている、起床時にのどが渇いている人は注意が必要です。
むし歯を治した後も、むし歯になった原因を歯医者さんに尋ねて危険因子を減らすこと、さらに定期健診を受けることをおすすめします。

引用元:
口から始めるアンチエイジング 中道 哲著 保育社刊