「神経を取ったまま」にするのは危険
最近は、歯に対する意識が向上したこともあり「定期的に受診」「冷たい物がしみる」などで早期に歯科医院を訪れる人が増えました。
しかし、相変わらず「痛くなって」「がまんできずに」受診する方も多いようです。
そうなると「むし歯が大きく、詰めるだけでは治りません。『神経』を取りましょう」ということになりかねません。
麻酔をし、神経をとって「では来週」と予約をとって帰るという経験をした方もいらっしゃるでしょう。
そして二、三日して痛みを感じなくなると、予約は気になるものの、仕事の忙しさにかまけて歯科医院から遠のいてしまう…。
しかし皆さん、神経を取ってそのままにしておくのは、とても危険なのです。
放置すると歯を抜く可能性がある
神経を取ったあとは人工物で密封しなければなりません。
密封せずそのままにしておくと、神経のあった空間にバイ菌が入り込み、歯の根の部分にウミがたまってしまいます。
そうなると歯を抜かざるを得なくなることが多いのです。
また、歯形をとって金属やプラスチックで被せ物などを作り、次はいよいよ装着、という段階で中断してしまう人もいます。
間に合わせの仮歯で、「これでいいや」と思ってしまうのでしょう。
でも、ピッタリ合わせて作った物とは違い、あくまでも”仮の歯”に過ぎません。
仮歯では、他の歯との段差があるためにバイ菌が入ってむし歯になりやすく、予後が心配です。
歯がもろくなってしまう
歯の表面は硬いエナメル質で覆われ、その内側に象牙質、さらに内側に神経と呼ばれる歯髄があります。
歯髄は細かい神経組織と血管からなるもので、歯に栄養を与え、痛みを感じるのもこの部分です。
このような役割のある神経を取ってしまった歯は、十分な栄養が与えられないためにもろくなり、強い力で噛むと折れてしまうことがあります。
また、その歯の別の部分がむし歯になっても、神経がないので痛みを感じることがなく、手遅れになってしまう可能性が高くなります。
「定期的に通う人」と「痛いときだけ行く人」で歯を失う数が変わる
20~30代のうちは、歯科医院へ定期的に通う人も痛みがある時だけ行く人も、歯を失う数の差はほとんどありません。
しかし40代以降になると、その差は徐々に大きくなります。
そして60歳以上では、定期的に通い処置もしっかり行えば失う数は1本以下ですが、痛くなった時や治療途中で止めてしまう人は10本以上も失ってしまいます。
むし歯になってしまったのは仕方ないにしても、神経を取ったままにしたり、仮歯のままで生活を続けるのはやめ、最後まで治療を終わらせましょう。
いい歯健康法 春夏秋冬 大阪府歯科保険医協会 かもがわ出版発行