むし歯の原因となる細菌のおもな栄養源は、食べ物だけでなく、唾液中に含まれる糖タンパクもそのひとつです。
糖尿病にかかっている人は唾液中に大量のグルコースが含まれているため、糖分をとらないのにむし歯になることがあります。
ですが、唾液はむし歯の友達というわけではありません。
食事をすると、酸を作り出す「プラーク」が増え、歯を溶かします。
しかし、よく噛んで食べることで唾液が分泌されると、口内の酸が減り石灰化させる「カルシウムイオン」が戻りやすくなります。
これにより歯の再石灰化が進んで、溶けた歯が元に戻るのです。
具体的には、飲食後30分ほどたつと、唾液の能力により歯垢が中和され、歯の表面から奪われたリンやカルシウムが再び歯の表面に沈着します。
また、唾液中のミネラル成分はエナメル質の部分を強くする作用があることから、常に唾液で潤った状態が歯の抵抗力を高めると言えます。
唾液はおもに舌の下とほおの内側から分泌され、無意識のうちに飲み込まれます。
唾液の恩恵をうけにくい下の奥歯のほお側は、舌側に比べてむし歯になる割合が高くなります。
食事は美味しく、病気も予防
そのほかにも、よく噛んで唾液をたくさん出すことによるメリットはたくさんあります。
●むし歯の予防
●歯周病(歯槽膿漏)の予防
●ガンの予防
●認知症の予防
●若返りの効果がある
●味覚を刺激する
数え上げればきりがありません。
そして何よりありがたいことは、食事が美味しくなることです。
また、健康ブームの昨今では数々の高額な薬や栄養剤が販売されていますが、中には副作用があるものもあります。
ところが、唾液には副作用が全くありません。
ここに「元手なしで出せば出すほど得をする」といったゆえんがあります。
さあ、今日からもう少し食事を味わってゆっくり楽しみませんか。
ご家族の団らんの場である食事を、じっくり美味しく食べられるだけでなく、お金では買えない健康も手に入ります。
恋する女は、歯がいのち? 同朋舎刊
いい歯健康法 春夏秋冬 大阪府歯科保険医協会 かもがわ出版発行