”唾液”は食べ物が出会う最初の消化液です。
食べ物をよくかんで、唾液を十分に混ぜることが消化器を助けるのはもちろんですし、唾液がガンの発生を抑えることもよく知られています。
「いつも胃腸の調子が良くない」という人の中には、唾液の分泌量が少なかったり、むし歯や歯周病があったり、かみ合わせが悪いなどの原因がよくあります。
十分にかむことができないと、胃によけいな負担がかかってしまい胃を悪くします。
あげくは、ついやわらかいものばかり食べるようになって偏食が起こり、栄養状態まで悪くしてしまいます。
歯の疾患はまた、肩こりやしつこい頭痛の原因にもなります。
歯を治したとたん、あんなに頑固に続いた肩こりがけろりと治ったというのもよくあることです。
むし歯はこのほか、腰痛や手のしびれなどの症状を引き出したりもします。
歯を失うことで全身に様々な影響を与える
人の寿命がのびて高齢者の健康の問題がクローズアップされていますが、最近のある統計では、アルツハイマー型認知症の患者のうち70%以上が自分の歯をほとんど持っていないということが報告されています。
健康者の場合、自分の歯をほぼ失っている人は30%程度ですから、歯と認知症にはなんらかの因果関係があることは明らかと考えられます。
また、歯は美容上でもたいせつな部分のため、歯並びや口臭を気にして人前に出ることが苦になったり、口元を隠して話すといった行動が現れると、その人の生き方やメンタルヘルスといった部分でも弊害が出てきます。
事実、そういうことで深刻な事態になる人も少なくありません。
逆に、全身の健康状態が歯の健康に影響を及ぼすこともあります。
胃腸障害や偏食などで栄養の偏った人は、歯の栄養状態も悪くなるため、当然むし歯や歯周病にかかりやすくなります。
そのほか糖尿病が歯周病の悪化を手伝うことや、高血圧や腎臓疾患なども口腔衛生に悪影響があるといわれています。
新訂歯がわかる本 みずうみ書房発行