プラーク(歯垢)の石灰化したものが歯石とよばれ、これは普段の歯みがきだけでは取り除くことができません。放置しておくと、歯がグラグラになってしまう場合があります。
歯周病は生活習慣病の一つ
歯石とは、プラーク(歯垢)の石灰化したもので、歯茎と歯の間に沈着する硬い固まりのことです。
生活習慣病は、食事の偏り、運動、休息、喫煙、アルコールなどの習癖とそれらの伸展に伴って発症する疾患といわれています。
歯周病が歯科の疾病の中で、唯一生活習慣病としてあげられている理由は、日常生活習慣に左右されるからです。正しい歯みがきを行って、プラークを除去していれば歯石はつくはずがないという理屈になりますが、それではなぜ、歯石がたまってしまうのでしょうか?
プラークが放置されると歯石に
プラーク(歯垢)が歯や歯茎のまわりに付着すると、歯茎は白血球の防御力が作用して、歯茎を守ります。しかし、白血球の殺菌力が弱くなると、細菌毒素や酵素などが反応して炎症が生じます。次第に歯茎内部の血管が拡張し、血液成分が滲出液となって、歯肉溝(ポケット)上皮から滲出します。一部では、防御する好中球が敗れて膿となって出てきますが、このときに歯や歯茎のまわりを清潔にしておけば、炎症症状はなくなり、歯茎も元どおりに回復する可能性があります。
しかし、そのまま放置しておくと、血清が石灰化して歯石がセメント質に沈着します。そして、睡液中のカルシウムやリン酸と結合して、より強固な石が歯茎や歯の下方部分にできてきます。これらの沈着物が歯石といわれ、歯を磨いただけでは取れません。歯石はほかの臓器、たとえば腎・肝・唾液管などに沈着する石と同じような異物です。この異物を放っておくと、痛みを伴ってきます。ほかの臓器は内部で閉鎖されていますが、歯石は幸か不幸か、歯茎が外部へつながっていますので急性症状があっても、一部が外部への逃げ場を持っているため、症状がひどくなりません。そのため、放置している人が多いのです。
まずプラークの除去を
治療する際には、このような異物はきれいに除去し、感染予防のために口の中を清潔にして治療を行うのが原則です。長期間放置したままでいる人は、下顎の前歯部の裏側や、上顎の奥歯の表面などに歯石がピッタリと沈着しているケースがみられます。これは、歯茎を痩せさせたり、ポケットの中の歯石はさらにポケットを深くしたりして、歯をグラグラにしてしまう原因になります。
歯周病にならないようにするには、歯石を放置しないようにすることです。そのためには、歯周病の原因であるプラークの段階で早いうちに除去することが大切になってきます。
お口の健康ア・ラ・カルト 鴨井久一著 医歯薬出版㈱刊