歯とからだの話
2018/07/13

歯周病からみた生活習慣病

以前は壮年期以後のいろいろな病気のことは「成人病」といわれました。
最近、成人病は生活習慣に深い関係があるので「生活習慣病」とよばれます。歯周病もその一つなのです。

生活習慣が病気を作る

生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、癌、高血圧、糖尿病、心臓病、歯周病などの疾患の発症、進行に関与する疾病」といわれています。口の領域の中で歯周病がなぜ、生活習慣病といわれるのか、その理由について説明いたします。

歯周病の3つの要素 感染、遺伝、環境

歯周病の原因は感染症とされ、歯周病菌が歯や歯茎に定着し、歯茎に炎症を起こし、歯を取り囲んでいる組織の線維や骨を破壊し、吸収させます。しかし症状は顕著にはみられず、痛みがなく、深く静かに潜行して進行していきます。さらに歯周病に罹りやすい人は、歯周病原菌に対する生体の防御作用が弱いといわれています。これには生まれつき親からの遺伝子が働いているものと思われます。

さらに歯周病は、環境因子に多く作用されます。たとえば、喫煙は歯茎に対して白血球の殺菌作用を弱めます。また不規則な生活をすることで、腸内細菌叢の活性を弱めたり、暴飲暴食などにより、肥満の原因になったりコレステロール値を上げたりします。食生活で大切なことは、よく味わって、「よく噛みながら食べる」ことです。とくに最近の食品は、加工しすぎて軟らかいものが主となり、よく噛まないままで食道へ食塊を流し込んでしまいます。以上のような3つの要素を持っているのが歯周病です。

大切な歯磨き、そしてすべての習慣が健康に影響する

歯周病の直接の原因は歯周病原菌ですが、これを除去する方法は、基本的には歯口清掃です。すなわち、歯と歯茎に付着したプラーク細菌(歯垢)を機械的に丁寧に除去することが大切です。日常の生活の中で、食後の歯磨きは家庭でも職場でもかなり定着してきましたが、完全ではありません。歯や歯茎の汚れを取ることは、本人の自助努力であり、だれが助けてくれるわけでもありません。これはアルコールでも同じです。ビールなら1本、お酒は2合以下などと基準値を設けコントロールします。日常生活におけるすべての習慣が、健康を守るうえでいかに大切であるかを考える必要があります。

健康管理は口から始まる

歯周病が心臓疾患、呼吸器疾患や糖尿病を悪化させたり、高血圧症や狭心症の薬物の副作用、低体重児出産、早産などと関連する事実も明らかになってきました。健康管理は口からといわれております。皆さんがなんとなく毎日行っているブラッシングも、重要な意味を持つことを認識して生活習慣病といわれる歯周病にならないよう気をつけたいものです。

 

引用元:
お口の健康ア・ラ・カルト 鴨井久一著 医歯薬出版㈱刊