歯肉の異常は、むし歯などよりもずっと自分で見つけやすく、歯周病までいかないうちに早期の治療がしやすいものです。
程度の差こそあれ、歯周病の傾向はほとんどの人にあります。
むし歯とは別な原因菌ですから、むし歯のまったくない人でも歯周病になることはあります。
自分は歯がじょうぶだから、などと安心せず、つねに自分の歯や歯茎の状態には気をつけるように習慣づけたいものです。
歯周病を早いうちに見つけましょう
歯周病はよほどひどくならない限り、痛みや不快感などの危険信号を出してはくれません。
ですから、初期のうちにその兆候を見つけるには、歯磨きのときなどに自分で歯や歯茎を観察するしかないのです。
歯周病の初期、歯肉炎
この段階でまず現れる症状は、歯茎の色の変化です。
歯の生え際のところの歯茎をよく見てください。健康な歯茎ならきれいなピンクのはずです。歯肉炎がはじまっていると、これがやや紫がかった赤になります。赤いだけではなく、少し腫れているはずです。もっとも、腫れ方は健康な歯茎と並べて比較しないとわかりにくいかもしれません。
とくに歯と歯の間の、歯肉が三角形になっているところに注意してください。
最初にやられるのはこういうところです。
指で押してみて、変にぶよぶよと、やわらかい感じがしたら危険信号です。これは、歯茎と歯の間のすき間でばい菌と血液が戦っている状態です。血液がそこに集合してばい菌に抵抗する、そこで充血が起こるというわけです。
悪いことには、歯茎が腫れると、そのすき間は広がり、ばい菌はますます入り込みやすくなります。そして、リンゴなど、かたいものをかじると少し血が出ます。歯を磨いたときにも多少出血します。そんなものだと思っている人も多いようですが、健康な歯茎ではこういうことは起こりません。
歯茎の中の戦いで、ばい菌が勢力を得ると、そこが膿をもつようになります。口が臭くなるのはそのせいです。また、膿が口の中に出てきて、朝起きたときなどに口の中がネバネバします。
歯茎がやせて、歯が長くなったように見えることもあります。
初期の歯周病なら、歯磨きと歯茎のブラッシングをていねいに続けるだけで治すことができます。
できれば、歯茎がちょっと腫れているようだな、というぐらいのうちに歯科医にみせたいものです。
歯がぐらぐらして、ものがかみにくいとか、水などがしみる、などというところまでいくと、もうりっぱな歯周炎で、治療もたいへんですし、最悪の場合、総入れ歯ということも覚悟しなければなりません。
こうなる前に発見しておかなくてはならないのです。
歯がわかる本 鴨井久一監修 みずうみ書房刊