お口の中の話
2018/08/01

新しい入れ歯の発音トレーニング法

入れ歯を新しくすると、はじめはなんとなく違和感があります。舌がなめらかに動かず、ものを食べることだけでなく、発音がおかしいのではと不安になったりします。上手に発音できるようになるには、ものを噛むときと同じで、やはりそれなりの時間と訓練が必要なのです。
そこで、新しく入れ歯を入れたときの発音トレーニングについて、お話してみましょう。
発音をする場合も、舌、唇、頬などといった口の中の各組織の調和が大切です。それぞれがうまく働かなくてはスムーズに発音できません。しかし、口にとって入れ歯は巨大な異物ですから、それぞれの組織の働きは、最初から、そうすんなりとはいきません。あせらずに発音トレーニングをくり返しましょう。訓練をくり返せば、入れ歯の周りの組織がいつのまにか、なじんで、上手に発音できるようになります。ここでは、入れ歯を入れると、とくに発音しにくくなる音をあげてみました。

サ行、夕行の音

上あごに入れ歯を入れると、サ行やタ行の発音がしにくくなりますが、これは上あごの内側を厚ぼったい義歯床が覆ってしまうためです。上あごの内側と舌との連携プレーがうまくいかなくなるのです。ただし、入れ歯の床が金属の場合は、とてもうすく丈夫に仕上がるので、サ行やタ行の発音もしやすく、違和感もほとんどありません。

ナ行、ラ行の音

一方、下あごに入れ歯を入れると、ナ行やラ行など舌を巻いてする発音がしにくくなります。なぜなら、下あごにはりついた義歯床が舌の動きなどを邪魔するせいで、舌がうまく丸まってくれないからです。
入れ歯を入れてから一〜二週間くらいは、自分の発音をよく聞いてみることにしましょう。そして、発音しにくい音をチェックしておきます。家族や友人にも聞いてもらって、発音がおかしくないかチェックしてもらうのもよいでしょう。そうして、不得意な音をくり返し発声練習するのです。トレーニングのときは、少しだけ力を入れるようにすると、発声に関係する筋肉の訓練になって効果的です。ものを噛む練習のときと同じで、発音練習も二週間くらいでコツがわかってきますから、安心してトレーニングを続けてください。
最後にもう一つ、噛む練習と発音練習と同時に、口を大きく開け閉めするトレーニングをおすすめします。そうやって口の筋肉をやわらかくしておくことが、入れ歯に早くなれるコツなのです。

 

引用元:
合わない入れ歯はボケるもと 市来英雄著 砂書房