歯とからだの話
2018/08/02

妊婦と歯周病

歯周病の直接の原因は、細菌感染ですが、細菌感染によって歯周病が発症しひどくなってしまう人は、必ずかかりやすさの因子をたくさんもっています。実は、女性であることはそれだけでかかりやすさの因子なのです。その原因は「女性ホルモン」。
主に月経、更年期などに分泌が盛んになるエストロゲン。このエストロゲンを栄養にして、歯周病原菌は女性の体内で増え続けるのです。また、妊娠中の女性には、プロゲステロンが悪影響を及ぼします。妊娠中は歯周病にかかりやすく『歯周病にかかっているお母さんというのは、未熟児出産や早産を起こす確立が7倍も多いと言われています。』(日本歯科大学病院院長 医学博士・歯学博士 鴨井久一先生)
なんと歯周病が、未熟児出産や早産を引き起こす可能性があるのです。妊娠とも多く、どうしても歯みがきが怠りがちになり、歯周病になりやすい状態であるといえます。妊娠性歯肉炎は妊娠末期になれば自然におさまりますが、その間に歯を支える組織の破壊がすすんでしまいます。
近年、早産は増加する傾向にあり、今や、早産になる歯周病の確率は、喫煙や飲酒よりも高いと考えられています。赤ちゃんは、お母さんの羊水の中にある「プロスタグランジン」という物質が一定の量になった時に生まれます。しかし、歯周病原菌の一種、プレボテラ・インテルメディア(PI菌)が入ると、女性ホルモン量が3倍に増加し、羊水の「プロスタグランジン」が急激に増えて、一定の量に早く達してしまいます。その結果、子宮が収縮して早産を引き起こすといわれています。
このようなトラブルを防ぐためには、妊娠の前から定期的に予防治療を受け、セルフケアを怠らないことが必要です。
妊娠中は、このほか歯肉が赤くこぶのように腫れる妊娠性腫瘍ができたり、妊娠前の健康状態が十分でない人の場合には、なにかとトラブルが出やすい時期です。
生まれてくる赤ちゃんに口のなかの悪い細菌を感染させないためにも、それまで以上のケアを心がけましょう。
妊娠初期は可能な歯科治療に限りがあります。使える薬も限られています。子どものせいで歯を失ったなどと嘆かなくてすむように、妊娠前から定期的に専門的な予防処置を受ける習慣をつけておくことが肝要です。

引用元:
20歳からの歯周病対策 熊谷崇著 講談社