6月4日は6と4で〝ムシ〟。この日を「むし歯予防デー」と呼び、この日から一週間を「歯と口の健康週間」に設定し、全国各地で、自治体や歯科医師会などが口腔衛生普及キャンペーンを実施しています。
今回は「歯と口の健康週間」にちなんで、むし歯の〝虫〟についてのお話です。
歯を溶かす〝虫〟の酸
〝虫〟といっても口の中にすんでいるのは細菌です。「結核は結核菌」「赤痢は赤痢菌」が病原菌ですが、むし歯は特定の菌種が起こす疾病ではありません。むし歯は、口の中をすみかにしている多くの口腔細菌群のうち、酸を出し、歯を溶かす要注意細菌群が引き起こす現象です。むし歯原因菌の代表的なものは、ストレプト・ミュータンス菌群と呼ばれるものです。
この他にも口腔内には無数の菌が生息しています。ちなみにどれくらいの数かというと、耳かき一杯よりかなり少ないぐらいの量、1ミリグラムの歯垢中になんと約1億の細菌がいます。歯の表面に付着している白っぽい歯垢の正体は、口腔細菌のかたまりなのです。爪楊枝で歯垢をかきとって食べてしまう方がいますが、ご注意ください。さらに、朝、歯を磨く前の唾液一ミリリットルの中には、平均十億以上の細菌が泳いでいます。
私たちが食べる、飲むという行為をやめない限り、一生を通じて彼ら細菌群に栄養を与え続けるわけです。ですから、細菌を減らす対策を意識的に講じない限り彼らは増え続けるでしょう。
彼らへの対抗策は、むし歯を作るに至らない程度の数にまで彼らの数を減らすことです。薬剤を用いて科学的に減らす方法もありますが、彼らに効くものは私たちに少なからぬ危険性をもたらすため、あまり積極的に勧められる方法ではありません。となると、歯ブラシなどで物理的にこすり取るという方法が最善の方法といえます。
彼らは、歯の溝の中、歯と歯の隙間、歯と歯ぐきの間の溝、それに舌の表面や口の中の粘膜表面などいたるところに生息し、常に仲間を増やそうと待ち受けています。四角い部屋を丸く掃くなどということをせず、隅から隅まで清掃することを日々心掛けるのが、彼らとの戦いに勝利する道です。
いい歯健康法 春夏秋冬 かもがわ出版刊 大阪府歯科保険医協会