よくかんで食べるということは、歯の健康によいばかりではなく、全身の健康に大きな意味をもっています。
かりに、ステーキなどの肉の境をほとんどかまないで飲み込んだとしても、正常な胃腸機能をもった人なら肉はきれいに消化吸収されます。しかし、胃に負担をかけないためには、やはりこの点でもよくかんだほうがよいのです。
そして、よくかんでいる間に分泌される十分な唾液が、かんだ食物を飲み込みやすくしてくれます。
こうして胃に食物が入ると、しだいにおなかがふくれたことを感じるわけですが、満腹感を感じるのは食べてすぐではなく、一定の時間がたってからになります。ですから、あまり早食いだと、満腹感が追いつかず、つい食べすぎることになりやすいのです。
ゆっくりよくかんで食べる人は、体が出す満腹の信号を正常に読み取りますから、食べすぎにはなりません。つまり、よくかめば食べ過ぎを防ぐことができるわけで、これはダイエットにも有効ということになります。事実、よくかんで食べることでダイエット効果があることが報告されています。
また、唾液の中の成分が発ガン物質の発ガン性を抑える、という最近の研究成果も出ています。発ガン物質を唾液に浸すと発ガン性が著しく減るというのです。ガン予防によいといわれる食物や生活スタイルなどが注目されていますが、よくかんで食べる、というのも、ぜひ加えたいものです。
唾液には、ガンだけではなく胃や食道の傷を治す物質が少量ですが含まれています。そのため、ちょっとした潰瘍などは、よくかんで食べることで治ってしまうのです。
ともかく、食物を口に入れたら、少なくとも2、30回はかむようにしましょう。歯の健康にも全身の健康にもよく、過食や肥満を防ぐ効果もあるのです。
引用元:
新訂歯がわかる本 鴨井久一著 みずうみ書房
新訂歯がわかる本 鴨井久一著 みずうみ書房