歯垢にはむし歯の原因菌もいっぱい
歯周病と並んでよくみられる歯科疾患「むし歯」の医学的な正式病名は「う蝕症」という感染症。細菌に感染することにより起こる病気です。小さな子どもからお年寄りまで、かかる可能性があります。
私たちの口の中には、どんな人でも多かれ少なかれ歯垢(プラーク)があり、そこにはたくさんの細菌が存在します。むし歯の原因菌も、この歯垢の細菌の一つです。歯周病の原因菌は、空気に触れない歯肉の下の歯垢に潜んだ嫌気性菌でしたが、むし歯の原因菌は、好気性菌なので空気に触れるところを好み、歯の表面に付いた歯垢で活動しています。
歯垢はみがき残しが多い場所に発生する
むし歯の原因菌は、歯の表面でも、とくに歯垢が停滞しやすいところでよく活動します。
①かみ合わせの面、②歯と歯の間、③歯と歯ぐきの境目
の3か所がむし歯のできやすい場所です。
むし歯の原因菌はミュータンス菌
むし歯の原因菌としてよく知られているのは、ミュータンス菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)です。ミュータンス菌は糖分が大好きです。とくに砂糖(ショ糖)を好み、口の中に砂糖が残っていると、たちまちこれをとり囲んで分解し、分解の途中でたくさんの酸を作ります。この酸によって歯の表面が溶かされてしまうのが「う蝕症」すなわちむし歯です。歯の表面の溶け出しが進むと、やがては歯に穴があいたりして痛みます。歯の表面が少し溶けただけではほとんど痛みませんが、溶け出しが進んで、歯の中心部にあって血管や神経の詰まっている歯髄という部分に達すると、痛みがひどくなります。歯髄が完全におかされると、痛みを感じなくなることもあります。
歯垢中のむし歯の原因菌は、歯の表面などに残った食べカスを好み、これを分解しながら増殖します。しかしプラークコントロールによってこの菌の増殖をおさえれば、むし歯の進行も食い止めることができます。
正しいプラークコントロールの方法を、かかりつけの歯科医院で教わりましょう。
中・高年の歯の病気がすべてわかる本 森山貴史著 主婦と生活社刊